抵当権抹消登記は、司法書士に依頼せずご自身で行うことも可能です。

ただし、不動産の登記手続をするのがはじめての場合(ほとんどの方はそうだと思いますが)、平日の日中に何度か登記所(法務局)へ行く時間が取れるのが最低条件です。

登記手続は、その不動産(土地、家屋)所在地を管轄する法務局でしなければなりません。たとえば、千葉県松戸市、流山市にある不動産ならば、千葉地方法務局松戸支局に行く必要があります。

司法書士が抵当権抹消をする際は、インターネットを利用したオンライン登記申請、または郵送による登記申請をするので、わざわざ管轄法務局まで行くことはありません(地元の法務局を除く)。

しかし、一般の方が自分で抵当権抹消登記をする際には、事前に法務局職員に登記申請書等のチェックをしてもらう必要がありますから、郵送による登記申請は難しいと思われます。

ご自分で抵当権抹消登記をするのが難しいケース

法務局まで出向くのは問題ないとしても、抵当権抹消登記をする前提として、別の登記が必要になることがあります。たとえば、抵当権者(借入先の金融機関や保証会社など)について合併や組織変更などがあったときです。

一例として、旧「住宅金融公庫」からの借入の場合、抵当権抹消登記をする前に、住宅金融公庫から「独立行政法人 住宅金融支援機構」への「抵当権移転登記」が必要になることがあります。この抵当権移転登記をご自分でするのは困難ですから、抵当権移転および抵当権抹消の2つの登記を司法書士に依頼することになるでしょう。

なお、抵当権者が商号変更や本店移転をしている場合には、その変更の経緯が分かる登記事項証明書(履歴事項証明書、閉鎖事項証明書など)の添付が必要ですが、前提としての変更登記は不要です。このあたりの判断も、専門家でないとなかなか難しいところです。

また、抵当権設定登記をした後に、引っ越しで住所が変わった場合、結婚により姓が変わった場合などには、抵当権抹消登記の前に登記名義人の住所(または、氏名)変更登記が必要です。このような場合も、ご自身で手続をするのは少し大変かもしれません。

抵当権抹消登記の手続

ここまで述べたことを踏まえたうえで、抵当権抹消登記をご自分でおこなう場合、どのような手続が必要になるでしょうか。

まずは、住宅ローンを完済すると、借入先の金融機関や保証会社などから抵当権抹消登記に必要な書類一式が交付されます。後は、その書類の記載内容に基づいて登記申請書を作成するだけです。なお、登記申請書を作成する前に、法務局で不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)を取得しておいた方が良いでしょう。

抵当権抹消の登記申請書は下記のとおりで、A4サイズの用紙で作成します。パソコンのワープロソフトで作成しても良いですし、手書きでも構いません。

抵当権抹消登記申請書の記載例

登記申請書

登記の目的 抵当権抹消

原因 平成22年 2月 2日 弁済

抹消すべき登記 平成11年11月11日 第111111号

権利者  千葉県松戸市松戸1176番地の2
      KAMEI.BLD.306号
      高島 一寛

義務者  東京都文京区後楽一丁目4番10号
      独立行政法人住宅金融支援機構
      理事長 ○ ○  ○ ○

添付書類  登記原因証明情報  登記識別情報(または登記済証)
      代理権限証書 資格証明書

平成22年 2月22日申請 千葉地方法務局 松戸支局 御中

申請人兼義務者代理人
      千葉県松戸市松戸1176番地の2
      KAMEI.BLD.306号
      高島 一寛
      連絡先の電話番号 047-703-3201

登録免許税  金2,000円

不動産の表示
所在 松戸市松戸
地番 1176番2
地目 宅地
地積 100.00平方メートル

所在 松戸市松戸1176番地2
家屋番号 1176番2
書類 居宅
構造 木造瓦葺2階建
床面積 1階50平方メートル 2階50平方メートル

上記と同じ内容ですが、実際の作成例をPDF文書でご覧になれます。

抵当権抹消登記申請書(記載例)

登記申請書の記載内容について

1.原因

登記原因証明情報に書かれているとおりに記載します。原因には解除、弁済、主債務消滅、放棄などがあります。

2.抹消すべき登記

抵当権設定日および法務局の受付番号を記載します。登記識別情報(または登記済証)に記載されていますが、不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)の記載を見るのが確実です。

3.権利者

ご自分の住所氏名を記載します。不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)に記載されている、所有者の住所氏名と一致していなければなりません。

よって、引っ越しをしていたり、結婚により姓が変わっている場合などは、抵当権抹消登記の前に住所(または氏名)の変更登記(所有権登記名義人住所・氏名変更)が必要です。

4.義務者

抵当権者の本店所在地・商号・代表者の資格および氏名を記載します。抵当権者である会社・法人の登記簿謄本(登記事項証明書)、代表者事項証明書の通りにします。

抵当権設定後に、抵当権者である会社・法人が商号変更や本店移転をしたことにより、不動産登記簿謄本(登記事項証明書)に記載されている商号・本店と、現在のそれが異なる場合、変更したことが分かる証明書(変更証明書)が必要です。

なお、上記のような商号変更や本店移転ではなく、抵当権者が他の会社に吸収合併された場合などは、事前に抵当権移転登記をしなければなりません。このときは、ご自分で登記するのは困難なので、司法書士に依頼するしかないと思われます。

5.不動産の表示

不動産の登記簿謄本(登記事項証明書)に書かれているとおりに記載します。

その他の事項については、上記申請書を参考にしていただければ問題ないかと思います。続いて、登記申請書に「添付書類」として記載した書類を添付します。具体的には次のとおりです。

登記申請書の添付書類について

1.登記原因証明情報

登記原因証明情報にあたるのが、抵当権解除証書・弁済証書というような表題の書類です。この登記原因証明情報に、「平成○○年○○月○○日解除」のように抵当権の抹消原因と日付が記載されているので、これを登記申請書に記載します。

また、独立した書類としての登記原因証明情報(解除証書・弁済証書)が存在せず、後述する抵当権設定契約書に「抵当権を解除しました」とのスタンプが押してあることがあります。この場合、抵当権設定契約書が登記原因証明情報を兼ねることになります。

2.登記識別情報(または登記済証)

登記識別情報、登記済証のいずれか入っている方を添付します。登記識別情報は、登記識別情報通知と書かれた緑色のA4サイズの用紙です。登記済証ならば、住宅ローン借入れの際に作成した抵当権設定契約書(類似する別の名称のこともあります)です。

3.代理権権限証書

委任状のことです。金融機関が交付するときは、代理人の欄が空白になっています。ご自身で登記する場合には、そこにご自分の住所氏名を記入することになります。委任状の記載を間違えると、訂正不可能なことが多いので慎重に記入しましょう。

4.資格証明書

抵当権者の代表者の資格証明書です。登記簿謄本(登記事項証明書)が入っている場合と、代表者事項証明書の場合とがあります。この書類は登記申請日において発行から3ヶ月以内で無ければなりません。

上記の申請書記載例であれば、住宅金融支援機構の理事長についての資格証明書ですし、銀行や保証会社であれば代表取締役の資格証明書となります。

登記申請書および添付書類の提出の仕方について

上記書類の準備が出来たら、抵当権抹消登記申請書、添付書類、および収入印紙を法務局に提出します。収入印紙は登記を受けるのに必要な登録免許税を納付するために提出するもので、不動産1つあたり1000円です。

法務局に行ったら、まずは登記申請書の記載等を法務局職員にチェックして貰った方が良いと思います。また、書類の綴じ方にはルールがあり、割印も必要になるので、その点も法務局職員に確認してください。

前述の通り登記申請書および添付書類は、郵送で提出することも可能なのですが、はじめてご自分で登記申請をする場合は、やはり法務局に出向いた方が間違いないでしょう。

まとめ(抵当権抹消登記を司法書士に頼むべきか)

ここまで、抵当権抹消登記をご自分で行いたい方のために、分かりやすく手続を解説してみようと試みました。しかし、実際に書類作成をするにあたっては注意すべき点も多く、なかなか簡単にはいかなそうです。

それでも、前提登記を必要としない基本的なパターンの抵当権抹消登記であれば、インターネット等を活用して調べることができ、さらに法務局に何度か足を運ぶ時間が取れるのならば、ご自分で手続きすることも可能でしょう。

私は司法書士ですから、「抵当権抹消登記を司法書士に頼んだ方が良いか?」と尋ねられれば、その方が良いとお答えしてしまうに決まっています。しかし、私が司法書士ではなかったと仮定して考えてみても、自分で手続をする手間と時間を考えると、専門家に任せてしまった方が良いと思うのですがいかがでしょう・・・。

抵当権抹消登記の関連情報

抵当権抹消登記(高島司法書士事務所ホームページ)