父が祖父よりも先に亡くなっているとします。この場合で、祖父が亡くなったときには、本来相続人になるはずであった父の代わりに、孫(父の子)が相続人となります。これが代襲相続です。

それでは、父が亡くなったとき、父には借金があり債務超過の状態だったために、相続放棄をしていたとします。この場合、祖父が亡くなったときに、父の相続放棄をしている孫(父の子)は、その父の代襲者として、祖父の相続人となることができるのでしょうか?

結論からいえば、父の相続放棄をしていたとしても、祖父の相続については、父を代襲して相続人となります。具体的な事例として、下の図をご覧ください。

相続放棄後でも、代襲相続人となるのか

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平成20年に父が死亡したとき、長男は相続放棄をしました。これにより、父の相続について、長男は初めから相続人でなかったものとみなされます。

その後、平成25年に祖父が死亡しました。長男は父の相続人にならなかったのであれば、父の代襲者として祖父の相続人になることもないようにも思えます。

しかしこの事例で、長男は祖父の相続人となります。父の相続を放棄しても、父の代襲相続人となる権利が奪われることはないのです。

このことは、民法939条により「相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす」と定められていることからも明らかです。「その相続」というのは、この例でいえば「父の相続」です。よって、祖父の相続を放棄するかどうかは、また別の話です。

それでも、父の相続放棄をしたのだから、父に属する権利義務の一切を放棄したのではないか?との疑問を持つかもしれません。この点については、子およびその代襲者等の相続権を定めた民法887条により明らかになります。少し長いですが、条文の全てを次に示します。

民法第887条 被相続人の子は、相続人となる。

2  被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第891条の規定(相続人の欠格事由)に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。

3  前項の規定は、代襲者が、相続の開始以前に死亡し、又は第891条の規定(相続人の欠格事由)に該当し、若しくは廃除によって、その代襲相続権を失った場合について準用する。

上記の条文から必要箇所を抜粋すると、代襲相続とは「被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる」ことです。「被相続人の子の子」が代襲相続人となるのであり、被相続人の子の相続人であることは必要条件ではありません。

よって、父の相続を放棄した場合であっても、祖父の相続人となるわけです。もしも、祖父の相続も放棄しようとするならば、あらためて相続放棄の手続きをする必要があります。

相続放棄と代襲相続の関連情報

相続放棄と代襲相続

相続放棄をした場合に、相続放棄した人の子(直系卑属)へ、代襲相続が生じることはありません。子の全員が相続放棄をした場合、父母や兄弟姉妹など次順位の相続人がいれば、その人が相続人となります。