子の配偶者に寄与分は認められませんが、特別寄与料の制度があります。

義父(夫の父)と養子縁組をしている場合を除き、子の嫁には、義父の遺産を相続する権利は一切ありません。嫁から見た義父とは、配偶者の父(直系尊属)に過ぎません。そこに親子関係は存在しませんから、遺産を相続する権利もありません。財産を残してもらうためには、遺言書を作成し遺贈する方法があります。

嫁は義父の遺産を相続できるのか

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(最終更新日:2021/10/29)

(質問)
私は、嫁いだ先の両親(義父、義母)と一緒に暮らしています。私自身の夫はすでに亡くなっているのですが、長年同居していたこともあって、私が年老いた義父母の世話をしている状況です。この先、義父が亡くなったときには、私にも義父の遺産を相続する権利はあるのでしょうか?

(回答)
最初に確認しておくと、義父と養子縁組をしている場合を除き、ご質問者(嫁)には、義父に対する相続権はありません(ただし、後述するとおり、特別寄与料の支払いを請求できる可能性はあります)。

嫁から見た義父とは、配偶者の父(直系尊属)に過ぎません。そこに親子関係は存在しませんから、遺産を相続する権利もないわけです。

ここで義父が亡くなったときに、義母が土地や家などの遺産をすべて相続したとします。そして、その後も嫁と義母の2人で暮らしていたとして、義母が亡くなったときにはどうなるでしょうか?

法律的にいえば当然の話なのですが、嫁(子の配偶者)には義母に対する相続権がありませんから、義母の相続人にすべての権利が行ってしまうこととなります。

義母に子、つまり、質問者からすれば夫の兄弟姉妹(または、その子)がいれば、その子たちがすべての遺産を相続します(第1順位相続人)。

第1順位の相続人がいない場合、義母に兄弟姉妹(または、その子供)がいれば相続人となります(第3順位相続人)。義母の甥や姪にすべての相続権が行ってしまうこともあるわけです。

そうなれば、ご質問者(子の配偶者)は、義母が所有していた財産に対して一切の相続権を持ちませんから、不安定な立場に置かれてしまう恐れもあります。

嫁の寄与分は認められる?

被相続人の財産の維持または増加について特別の貢献をした人に対し、本来の法定相続分を超える相続分を与えようとする寄与分の制度があります。

しかし、寄与分が認められるのは相続人であることが前提ですから、相続人ではない嫁(子の妻)に寄与分が認められることはありません。どんなに義父母のために貢献したとしても、そもそも相続人でないわけですから、財産を相続する権利を持つことはありません。

民法904条の2第1項

 共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第900条から第902条までの規定により算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする。

特別寄与料の制度

ここまで書いてきたとおり、嫁(子の配偶者)には義父母に対する相続権がなく、また、相続人ではないので寄与分が認められる対象にもなりません。

このような不公平を解消するため、平成30年の民法改正において特別寄与料の制度が創設されました。このことにより、「被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族」は、「相続の開始後、相続人に対し、特別寄与料の支払を請求することができる」ようになりました。

ただし、特別寄与料の支払について当事者間に協議が調わないときなどは、特別寄与者は家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができますが、特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から6ヶ月を経過したときまたは相続開始の時から1年を経過したときには、この請求をすることができなくなってしまうので注意が必要です。

なお、特別寄与料の請求ができるのは、改正法の施行日(令和元年7月1日)以降に開始した相続に関するものとなります。

民法1050条1項

 被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族(相続人、相続の放棄をした者及び第891条の規定に該当し又は廃除によってその相続権を失った者を除く。以下この条において「特別寄与者」という。)は、相続の開始後、相続人に対し、特別寄与者の寄与に応じた額の金銭(以下この条において「特別寄与料」という。)の支払を請求することができる。

嫁に相続財産を引き継がせる方法

生前におこなえる方法としては、義母と養子縁組をすることが考えられます。養子は実子と同じく第1順位の相続人として遺産相続権を持つことになりますが、相続権を得るため養子縁組するというのは現実的に難しい場合も多いかもしれません。

そこで、もう少し簡単におこなえる手段としては、義理の両親(義父、義母)が遺言書を作成しておくことが考えられます。嫁(子の妻)に財産を遺贈するとの遺言をしておくわけです(くわしくは、相続人でない人に財産を残すための遺贈をご覧ください)。

それでも、相続人から遺留分の主張をされる可能性もありますが、何の対策もしておかないよりは遥に良いはずです。さらに、遺言ではっきりとした意思表示をしておくことにより、それに異議を唱えるのを抑止する効果もあるでしょう。

繰り返しになりますが、養子縁組をしておらず、遺贈も受けていなかったとすれば、子の配偶者は遺産に対して一切の権利を持ちません(特別寄与料の支払いを請求できる可能性はあり)。よって、嫁(子の配偶者)の世話になっている義父(義母)としては、自分の遺産を誰が相続することになるのか、責任を持って考え生前に対策をするべきでしょう。

遺言書の作成については、千葉県松戸市の高島司法書士事務所へご相談ください。

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