遺言書の条項例 その2(清算分配、予備的遺言、遺言執行者)

自らの思いを確実に実現させるためには、遺言書にどのような記載をするのが良いのか、基本的な条項例(文例、記載例)について解説します。

目次 遺言書の条項例 その2(清算分配、予備的遺言、遺言執行者)
5.遺産分割の方法を指定する遺言(清算分配)
 5-1.全ての財産を換価し清算する場合
 2-1.一部の財産を換価し清算する場合
6.予備的遺言
7.遺言執行者の指定

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遺言書の条項例 その1
1.全ての財産を相続させる遺言
2.特定の財産を相続させる遺言
 2-1.特定の財産を特定の相続人に相続させる遺言
  (1) 土地を相続させる場合
  (2) 建物を相続させる場合
  (3) 銀行預金を相続させる場合
 2-2.全ての財産を特定の相続人に相続させる遺言
 2-3.一部の財産を特定の相続人に相続させる遺言
3.割合を定めて相続させる遺言
4.相続人でない人に財産を残すための遺言(遺贈)

遺言書の条項例 その3(負担、特別受益、遺留分減殺)
8.扶養義務、債務などを負担させる遺言
9.特別受益に関する意思表示(持戻免除)
10.遺留分減殺請求についての別段の意思表示

5.遺産分割の方法を指定する遺言(清算分配)

相続財産中に債務がある場合には、その債務の処理について指定しておくことで、遺産相続を巡るトラブルを防ぐことが期待できます。

遺言者の有する財産のすべて、または一部を換価(売却して金銭に換える)して債務を弁済し、残った財産を相続人に分配することがよくおこなわれます。このような方法を清算分配といっています。

清算分配をするには、相続財産を換価し、そのお金(換価金)により債務を弁済する作業が必要なため、遺言執行者の指定もおこなっておくべきです。

遺言執行者は相続人がなることもできますが(未成年者、破産者を除く)、債務の処理を円滑に進めるには、法律の専門家(弁護士、司法書士)を指定するのがよいかもしれません。

5-1.全ての財産を換価し清算する場合

第○条 遺言者は、遺言者の有する財産をすべて換価し、その換価金から遺言者の一切の債務を弁済した残金を、次のとおり分配するよう遺産分割の方法を指定する。

妻  ○(昭和○年○月○日生) 4分の2
長男 ○(昭和○年○月○日生) 4分の1
長女 ○(平成○年○月○日生) 4分の1

第○条 遺言者は、遺言執行者として次の者を指定する。
   東京都千代田区神田須田町○丁目○番○号
    司法書士 法務 太郎
    昭和○○年○○月○○日生

5-1.一部の財産を換価し清算する場合

第○条 遺言者は、遺言書の有する下記の土地を長男○○(昭和○○年○○月○○日生)に相続させる。

所在 松戸市松戸本町
地番 100番地1
地目 宅地
地積 100.00平方メートル

第○条 遺言者は、前○条の財産を除く遺言者の有する財産の全てを換価し、その換価金から遺言者の一切の債務を弁済した残金を、次のとおり分配するよう遺産分割の方法を指定する。

(以下、省略)

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6.予備的遺言

遺産を「相続させる」とされた相続人が、遺言者より先に死亡した場合に備えた遺言です。

「相続させる」旨の遺言は、その遺言により遺産を相続させるものとされた推定相続人が遺言者の死亡以前に死亡した場合には、その推定相続人の代襲者その他の者に遺産を相続させる旨の意思を有していたとみるべき特段の事情のない限り、その効力を生ずることはないと解するのが相当であるとされています(最高裁判所平成23年2月22日判決)。

そこで、「遺言書の死亡前又は遺言者と同時に死亡したときは、○○に相続させる」というような予備的遺言をしておくのが良いかもしれません。

また、遺贈については民法委994条1項により「遺贈は、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、その効力を生じない。」とされているので、同様に予備的遺言をすることが有益だといえます。

第○条 遺言者は、遺言書の有する下記の土地を妻○○に相続させる。

(不動産の表示 省略)

第○条 遺言者は、遺言者の妻○○が遺言者の死亡前に又は遺言者と同時に死亡したときは、第○条に定める財産全部を遺言者の長男○○(昭和○年○月○日生)に相続させる。

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7.遺言執行者の指定

遺言の内容を実現させるために、遺言執行者がいつでも必要なわけではありません。遺言執行者が絶対に必要なのは、遺言による認知や、推定相続人の廃除をする場合などに限られます。

たとえば、不動産を「相続させる」との遺言では、その不動産を引き継ぐ相続人が単独で名義変更(相続による所有権移転登記)をできますから、遺言執行者がおこなうべきことはありません。

しかし、遺言の内容によっては、遺言執行者を指定しておく必要性が高いこともあります。遺贈をする場合もその一つです。不動産を遺贈した場合、遺言執行者がいれば、相続人の協力を得ることなしに名義変更(遺贈による所有権移転登記)をすることができるからです。

また、遺言執行者を指定し、さらに遺言執行者の権限を明確にしておくことで、銀行預金の解約などの手続きがスムーズにおこなえることも期待できます。

第○条 遺言者は、遺言執行者として次の者を指定する。
   東京都千代田区神田須田町○丁目○番○号
    司法書士 法務 太郎
    昭和○○年○○月○○日生

2 遺言者は、遺言執行者に対し、○条記載の不動産についての所有権移転登記手続きをする権限、○条記載の預貯金について単独で名義変更、解約及び払い戻しをする権限、○○銀行○○支店の遺言者名義の貸金庫を単独で開披、名義変更及び解約をする権限、その他遺言執行のための一切の権限を付与する。

相続人以外の人を遺言執行者とするときには、遺言執行者の報酬についても定めておいた方がよいでしょう。下記のような定め方のほかに、金○○円のように金額を書くこともできます。

第○条 遺言者は、遺言執行者として次の者を指定する。
   (遺言執行者の表示 省略)

2 遺言執行者に対する報酬は、遺言者と司法書士○○との報酬約定書に定める額による。

なお、遺言により遺言執行者の報酬について定めていないときは、家庭裁判所が相続財産の状況その他の事情によって遺言執行者の報酬を定めることができるとされています(民法1018条第1項)。

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