遺言書(前妻との間の子が相続人となる場合)
配偶者(夫・妻)が相続人となるのは、相続が開始した時点で婚姻関係にあるときのみです。被相続人が死亡するよりも前に離婚していれば、離婚の相手方(前妻・前夫)が相続人となることはありません。
ところが、両親が離婚した場合であっても、子の相続権に変わりはありません。たとえば、子が未成年のときに離婚し、母を親権者に定めたとします。この場合であっても、父が亡くなったとき、子は相続人となります。
したがって、離婚後に再婚していた場合、再婚による配偶者や子とともに、前妻との間の子が相続人となるわけです。
このようなケースでは、遺言書を作成しておくのが必須だといえます。もしも、遺言書がなければ、遺産相続手続きをするためには、前妻との間の子の協力を得なければなりません。具体的には遺産分割協議書に署名押印(実印)したうえで、印鑑証明書を出してもらうことになります。
遺言者自らが生前に、前妻との間の子と良好な関係を保ち続けていたならまだしも、そのような事情がないならば遺産分割協議が困難になることも多いと予想されます。
子には遺留分がありますから、たとえ遺言書を書いておいたとしても、遺留分を侵害するような遺言内容だった場合には異議が出る可能性もあります。それでも、何もしないよりは、遺言書を作成しておくべきだといえます。
1.妻、および再婚後の子へ相続させようとする遺言
財産が不動産(2,000万円)、銀行預金(2,000万円)だったとして、妻へは不動産、再婚後の子へは銀行預金を相続させ、前妻との間の子には何も相続させないようにするための遺言は次のようになります。
第○条 遺言者は、遺言書の有する次の不動産を妻○○(昭和○○年○○月○○日生)に相続させる。
記
1.土地
所在 松戸市松戸本町
地番 100番地1
地目 宅地
地積 100.00平方メートル
2.建物
所在 松戸市松戸本町100番地1
家屋番号 100地1
種類 居宅
構造 木造瓦葺2階建
床面積 1階 50.00平方メートル
2階 40.00平方メートル
第○条 遺言者は、遺言書の有する預貯金の全部を長女○○(昭和○○年○○月○○日生)に相続させる。
子には遺留分があります。前妻との間の子から遺留分減殺請求があった場合に備え、遺留分減殺請求方法の指定をすることもできます。
本例のように定めておくことにより、前妻との間の子から遺留分減殺請求があった場合でも、自宅不動産を妻に残すことは可能となります。
第○条 遺言者は、長男○○から慰留分減殺請求があったときは、長女○○に相続させる財産からすべきものと定める。
2.前妻との間の子にも相続させる遺言
本例のケースでは、前妻との間の子の遺留分相当額は500万円です。
被相続人の財産総額4000万円の2分の1である2000万円が遺留分全体です。妻および子2人が相続人の場合、子の法定相続分は4分の1ですから、遺留分全体2000万円の4分の1がこの遺留分となるわけです。
この遺留分を侵害しない遺言内容とすることで、遺産相続を巡り争いが生じる危険性を減らすことが期待できます。遺留分に相当する現金や預貯金を用意しておけば、遺留分減殺請求がおこなわれるような事態が避けられます。この場合、遺言執行者を定めておくのも大事です。
遺言書作成の関連情報
被相続人が再婚している場合、前妻との間に子供がいたとすれば、その子供も法定相続人の1人となります。そのため、遺産分割協議をする際には、前妻との間の子供にも手続きに協力してもらう必要があるのです。
自らの思いを確実に実現させるためには、遺言書にどのような記載をするのが良いのか、基本的な条項例(文例、記載例)について解説します。
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