相続放棄が出来なくなる場合(法定単純承認事由) | 千葉県松戸市の高島司法書士事務所

被相続人が同居家族であったとすれば、相続財産を一切処分しないのはそもそも不可能でしょう。けれども、相続財産の一部を処分することが、法定単純承認事由なのですから細心の注意が必要です。相続放棄のご相談は、千葉県松戸市の高島司法書士事務所へ。

相続放棄が出来なくなる場合(法定単純承認事由)

相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に、単純承認、限定承認、相続放棄のいずれかを選択しなければなりません。そして、相続放棄、限定承認をするときは、上記期間内に家庭裁判所へその申立をします。

ところが、期間とは関係なく、自動的に相続を単純承認したものとみなされる場合があります。これを、相続の法定単純承認事由といい、民法で次のように定められています。

民法921条 次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。

  1. 相続人が相続財産の全部、または一部を処分したとき。ただし、保存行為、および短期賃貸(民法602条)をすることは、この限りでない。
  2. 相続人が熟慮期間内に限定承認、または相続放棄をしなかったとき。
  3. 相続人が、限定承認、または相続放棄をした後であっても、相続財産の全部もしくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、または悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき。ただし、その相続人が相続の放棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後は、この限りでない。

法定単純承認事由のうち1号については、相続財産の処分がどの程度まで許されるかが問題です。たとえば、被相続人が同居家族であったとすれば、相続財産に一切手を付けないことは不可能でしょう。けれども、相続財産の一部を処分することが、法定単純承認事由とされている以上は細心の注意が必要です。

この点について、すべてを明確に示すのは困難ですが、相続財産から葬儀費用を支出する行為、また、貯金を解約し、その一部を仏壇および墓石の購入費用の一部に充てた行為は、法定単純承認である相続財産の処分には当たらないとされています。ただし、社会的にみて不相当に高額のものでなければなりません(大阪高裁平成14年7月3日決定)。

また、下記のような判断を示した裁判例もあります。

法定単純承認に該当する

  • 遺産分割協議
  • 売掛債権の取立
  • 賃料受領口座の変更
  • 遺産による相続債務の弁済

ただし、相続財産により被相続人の債務を弁済した場合でも、期限の到来した債務の弁済については、財産の現状を維持するために必要な行為であり、相続財産の処分ではなく保存行為であると判断されることもあるでしょう。

また、遺産では無く自分自身の財産で相続債務の支払いをした場合には、相続財産の処分にはあたりません。被相続人の死亡を原因として支払われた死亡保険金により相続債務の支払いをした事例について、次のような裁判例があります。

相続人のした熟慮期間中の保険契約に基づく死亡保険金の請求及びその保険金の受領は、相続人の固有財産に属する権利行使をして、その保険金を受領したものに過ぎず、被相続人の相続財産の一部を処分した場合ではないから、相続財産の処分に該当しないことは明らかである。

そのうえ、相続人のした熟慮期間中の被相続人の相続債務の一部弁済行為は、自らの固有財産である死亡保険金をもってしたものであるから、これが相続財産の一部を処分したことにあたらないことは明らかである(福岡高等裁判所宮崎支部平成10年12月22日決定)。

法定単純承認に該当しない

  • 遺体自体や身の回りの品、僅少な金銭の受領
  • 遺産から葬儀費用や治療費を支払うこと
  • 交換価値のない物の形見分け

形見分けとして、交換価値がない物、多額遺産中のわずかな物を分けることは単純承認事由に該当しません。しかし、一般経済価値を有する物は、財産の処分であるとして法定単純承認事由となります。

相続人である被相続人の母が、相続財産である衣服、靴、家具などのほとんど全てを持ち帰った行為が、民法921条3号の相続財産の隠匿に当たるとされた裁判例があります(東京地方裁判所平成12年3月21日判決)。

この行為が、相続人による遺品持ち帰りが、自分が相続財産を引き取らない限り、すべて廃棄されてしまうことになって忍びないという母親としての心情によったものであり、相続人が被相続人の特定の債権者の債権回収を困難にするような意図、目的を有していなかったとしても、相続財産の隠匿に当たり法廷単純承認事由に該当すると判断されました。

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したがって、全国どこの裁判所への申立であっても、松戸の高島司法書士事務所へご依頼いただくことが可能ですし、遠方だからといって追加費用がかかることもありません(ただし、ご依頼いただく際には、面談によるご相談が原則として必要です)。

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