1人に相続分を集中させるための相続放棄はできる?

相続放棄の理由について

相続放棄は、被相続人(死亡した人)が借金を抱えたまま無くなった場合に、その債務を引き継がないために利用されることが多い手続きです。

しかし、必ずしも債務がある場合にのみ、相続放棄をするわけではありません。たとえば、裁判所作成の、相続放棄申述書の書式には「放棄の理由」として次の6つが記載されています。

  1. 被相続人から生前に贈与を受けている。
  2. 生活が安定している。
  3. 遺産が少ない。
  4. 遺産を分散させたくない。
  5. 債務超過のため。
  6. その他

上記のいずれかを選択すれば、相続放棄の申述が絶対に受理されるという意味ではありませんが、債務超過以外の理由で相続放棄をすることもあるのがご理解いただけると思います。

相続分集中のための相続放棄と遺産分割協議の違い

上記のとおり、相続放棄は必ずしも、被相続人の債務を引き継がないためだけに利用される手続きではありません。

相続人中の1人に相続分を集中させるために、他の相続人が相続放棄をすることもできます。典型的な例としては、被相続人である父が営んでいた事業を子の1人が引き継ぐために、他の相続人が相続放棄する場合です。

相続放棄した人は、最初から相続人で無かったものとみなされます。したがって、上記の例で言えば唯一の相続人となった子が全ての財産を相続することになるわけです。

ただし、相続放棄の手続きをしなくても、次のような方法により財産を1人の相続人に集中させることが考えられます。

このような方法によっても、不動産やその他の財産の名義変更をすることが可能であり、相続分を集中させるとの目的を達成することができるのですが、被相続人に債務(マイナスの財産)がある場合には話が別です。

被相続人の債務は、法定相続人へその相続分に応じて引き継がれます。相続人間で、1人の相続人が全ての債務を相続するとの遺産分割協議を成立させたとしても、それをもって債権者に対抗することはできません。債権者の同意を得ることができなければ、相続人の間だけでの取り決めに過ぎないのです。

相続人中の1人が全てを相続するという場合、債務(借金)も含めた全てを承継すると考えるのが通常でしょう。そのため、債権と債務の全てを含めた一切の遺産を相続しないものとするには、家庭裁判所での相続放棄手続きをすることが必要なのです。

なお、遺産分割協議をおこなうことは、相続の法定単純承認事由にあたります。したがって、遺産分割協議をした後に続放棄をすることは出来ないのが原則です(遺産分割協議が無効である場合を除く)。

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