慰謝料請求権の相続性

sunflower相続により、相続人は被相続人の一切の権利義務を承継するのですが、被相続人の一身に専属したものについては承継されないことになっています。

被相続人だから取得した、権利や義務である一身専属権は相続の対象にならないのです。一身専属権とは、被相続人本人でなければ目的が達成されない権利や義務です。

例えば、日本画の大家に「水墨画を描いて欲しい。」と、依頼した場合一身専属権であることは明白でしょう。しかし、一身専属権になるかどうか微妙な場合もあります。では、慰謝料の場合はどうでしょうか?

精神的、肉体的苦痛に対する賠償として金銭の支払いを求める権利を、慰謝料請求権といいます。精神的、肉体的苦痛を受ける本人以外には、その苦痛を感じることはないわけですから、慰謝料請求権は一身専属権と言えそうです。一身専属権に含まれるとすると、慰謝料請求権は相続財産に含まれなくなってしまいますが、それは妥当でしょうか。

慰謝料請求権は一身専属権なのか

慰謝料請求権が、一身専属権なので相続財産に含まれないとすると次のような不都合があります。
交通事故にあった場合を考えてください。大けがをして、本人が慰謝料を請求した場合当然権利があります。では、大けがをして、慰謝料請求を行った後、死亡してしまった場合はどうでしょうか。

この場合、けがをした本人が自分の受けた苦痛に対する慰謝料請求を行った時点で、「お金を払え」という請求になっています。お父さんが誰かにお金を貸していて、死亡した場合相続した息子が「お金を返して」と要求することができます。同じように、慰謝料請求をしていた場合も、けがをした本人が死亡した場合相続人が「お金を支払って」と請求することができます。

これに対して、交通事故にあって即死してしまった場合、本人は慰謝料請求できません。この時、「慰謝料請求権は一身専属権だから相続の対象にならない」と考えると大けがをした場合に比べ不公平です。事故でこん睡状態や即死となった場合、慰謝料請求権が相続されるか、裁判でも争われました。

裁判所は事故で即死してしまったような場合、被害者が取得した慰謝料請求権は相続されると判断しました。即死のほうがけがより被害が大きいのに、慰謝料請求権が認められないというのはおかしいので、この判断は納得できる方が多いのではないでしょうか。

参考)最高裁判所昭和42年11月1日判決

ある者が他人の故意過失によって財産以外の損害を被った場合には、その者は、財産上の損害を被った場合と同様、損害の発生と同時にその賠償を請求する権利すなわち慰謝料請求権を取得し、右請求権を放棄したものと解しうる特別の事情がないかぎり、これを行使することができ、その損害の賠償を請求する意思を表明するなど格別の行為をすることを必要とするものではない。そして、当該被害者が死亡したときは、その相続人は当然に慰謝料請求権を相続するものと解するのが相当である。

けだし、損害賠償請求権発生の時点について、民法は、その損害が財産上のものであるか、財産以外のものであるかによって、別異の取扱いをしていないし、慰謝料請求権が発生する場合における被害法益は当該被害者の一身に専属するものであるけれども、これを侵害したことによって生ずる慰謝料請求権そのものは、財産上の損害賠償請求権と同様、単純な金銭債権であり、相続の対象となりえないものと解すべき法的根拠はなく、民法711条によれば、生命を害された被害者と一定の身分関係にある者は、被害者の取得する慰謝料請求権とは別に、固有の慰謝料請求権を取得しうるが、この両者の請求権は被害法益を異にし、併存しうるものであり、かつ、被害者の相続人は、必ずしも、同条の規定により慰謝料請求権を取得しうるものとは限らないのであるから、同条があるからといつて、慰藉料請求権が相続の対象となりえないものと解すべきではないからである。

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