本人が無権代理人を相続した場合

sign「連帯保証人になっても良いよ。」と何らかの承諾をしていた場合、代理権を与えていたとみなされ保証契約は成立するでしょう。しかし、承諾していないのに勝手に連帯保証人にされた場合どうなるでしょうか?この場合、代理権を全く与えてないと認められれば無権代理人(権限を持たない代理人)が勝手にした行為として、無効になるでしょう。

これは、たとえ親子や兄弟でも同じです。父親が勝手に息子を連帯保証人にした場合、法律的には無権代理であり息子は連帯保証人になる必要はありません。ではだれが責任を取るかというと、勝手に無権代理を行った無権代理人です。

無権代理行為の例(連帯保証契約)

Aは、信用金庫でお金を借りようとしましたが連帯保証人が必要と言われました。Bに頼みましたが、Bは連帯保証人にはなれませんでした。しかし、BはAを助けてあげたいと思い、Bの息子Yを勝手に連帯保証人にして融資を受けることにしました。結局AはYを連帯保証人として、信用金庫から100万円の融資を受けました。

これは息子Yには何も言わず行った行為で、Yも父親Bがそのようなことをするとは思ってもいませんでした。このような場合、Yは信用金庫から、「連帯保証人として、支払いをしてほしい」と請求されても断れるはずです。Yが断った場合、父親Bが無権代理人として責任を果たすことになります。信用金庫は、Bに「100万円返済して欲しい」ということができるのです。

ところが、Bは死亡し息子Yが相続人となりました。相続人は、死亡した被相続人の権利義務を承継します。信用金庫は、「Bが支払うべきだった100万円は、相続人であるYが支払う義務を負っている」と主張するでしょう。これに対し、息子Yは「父親Bが生きているときには無権代理人が勝手にやった行為を拒絶することができたのだから支払いたくない。」と主張しました。Yは、父親の無権代理人としての義務を果たさなくてもいいのでしょうか。

この場合、確かにYはY自身の権利として信用金庫からの請求を拒否することができます。しかし、父親Bを相続したことにより無権代理人としての義務も承継したとみなされます。つまり、本人として拒絶する権利と、相続人としての義務、2つを併せ持っていると判断されました。したがって、Yは信用金庫から100万円の返済を求められれば支払いを行わなくてはなりません。

参考)最高裁判所 昭和48年7月3日 判決

民法117条による無権代理人の債務が相続の対象となることは明らかであって、このことは本人が無権代理人を相続した場合でも異ならないから、本人は相続により無権代理人の右債務を承継するのであり、本人として無権代理行為の追認を拒絶できる地位にあったからといって右債務を免れることはできないと解すべきである。まして、無権代理人を相続した共同相続人のうちの一人が本人であるからといつて、本人以外の相続人が無権代理人の債務を相続しないとか債務を免れうると解すべき理由はない。

なお、上記判決の中で、「本人が無権代理人を相続した場合、無権代理行為が当然に有効となるものではない」旨を判示した下記の最高裁判決と抵触するものではないとしています。

しかし、無権代理人が本人を相続した場合においては、自らした無権代理行為につき本人の資格において追認を拒絶する余地を認めるのは信義則に反するから、右無権代理行為は相続と共に当然有効となると解するのが相当であるけれども、本人が無権代理人を相続した場合は、これと同様に論ずることはできない。後者の場合においては、相続人たる本人が被相続人の無権代理行為の追認を拒絶しても、何ら信義に反するところはないから、被相続人の無権代理行為は一般に本人の相続により当然有効となるものではないと解するのが相当である(最高裁判所昭和37年4月20日判決)。

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