被相続人名義の銀行預金を解約し、入院費や葬儀費用を支払った場合に相続放棄できるか

母が亡くなった後、被相続人である母名義の銀行預金を解約し、解約金を母の入院費の支払や葬儀費用の一部に充てました。こうした行為は、相続財産の処分にあたるとされ、その後に相続放棄をすることはできないのでしょうか。

相続財産の処分と保存行為(相続放棄できるのか)

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(公開日:2014年6月27日)

(質問)
母が亡くなった後、被相続人である母名義の銀行預金を解約し、解約金を母の入院費の支払や葬儀費用の一部に充てました。こうした行為は、相続財産の処分にあたるとされ、その後に相続放棄をすることはできないのでしょうか。

(回答)
相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき、その相続人は単純承認をしたものとみなされます(民法921条1号本文)。ただし、相続人が相続放棄をするまでは、その固有財産におけるのと同一の注意をもって、相続財産を管理しなければなりません(民法918条1項)。

つまり、相続人には、相続財産を管理する権利義務を有するのであり、保存行為は単純承認をしたものとみなされる処分行為には該当しません(民法921条1号ただし書き)。保存行為とは、財産の現状を維持する行為のことで、典型的な例として、期限の到来した債務の弁済や、腐敗しやすい物の処分などが挙げられます。

民法918条1項(相続財産の管理)
相続人は、その固有財産におけるのと同一の注意をもって、相続財産を管理しなければならない。ただし、相続の承認又は放棄をしたときは、この限りでない。

第921条(法定単純承認)
次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。
1  相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第602条(短期賃貸借)に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。
(2,3号は省略)

被相続人名義の銀行預金を解約し、入院費を支払うのは相続財産の処分にあたるか

「期限の到来した債務の弁済」は保存行為ですから、単純承認をしたものとみなされる処分行為には該当しません。生前の入院費は、被相続人自身が支払うべきであったもので、相続開始時に支払期限が到来していると考えれば、その支払いをするのは保存行為だといえます。

したがって、被相続人名義の銀行預金を解約し、入院費を支払ったとしても相続財産の処分には該当しないことになります。

相続財産を、葬儀費用の支払いに充てた場合

被相続人の葬儀費用は、入院費とは違って、被相続人自身が支払うべきものではありません。つまり、葬儀費用は相続債務には含まれないわけです。したがって、葬儀費用の支払い義務があるのは、葬儀をおこなった相続人なので、相続財産から葬儀費用を支出することは、相続財産の処分に当たるのではないかという疑問も生じます。

けれども、葬儀は、人生最後の儀式として執り行われ、社会的儀式として必要性が高いものであり、被相続人に相続財産があるときは、それをもって被相続人の葬儀費用に充当しても社会的見地から不当なものとはいえないとして、相続財産から葬儀費用を支出する行為は、法定単純承認たる「相続財産の処分」には当たらないとされています。

(平成14年7月3日 大阪高等裁判所 決定)
葬儀は、人生最後の儀式として執り行われるものであり、社会的儀式として必要性が高いものである。そして、その時期を予想することは困難であり、葬儀を執り行うためには、必ず相当額の支出を伴うものである。
これらの点からすれば、被相続人に相続財産があるときは、それをもって被相続人の葬儀費用に充当しても社会的見地から不当なものとはいえない。
また、相続財産があるにもかかわらず、これを使用することが許されず、相続人らに資力がないため被相続人の葬儀を執り行うことができないとすれば、むしろ非常識な結果といわざるを得ないものである。
したがって、相続財産から葬儀費用を支出する行為は、法定単純承認たる「相続財産の処分」(民法921条1号)には当たらないというべきである。

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