3ヶ月経過後の相続放棄(相続人代表者指定届が届いた) | 千葉県松戸市の高島司法書士事務所

被相続人の子が、相続開始(父の死亡)から3ヶ月が経過した後に相続放棄申述して、無事に受理された事例です。 客観的にみれば熟慮期間を経過していると判断されても仕方ない事実はあるものの、ご依頼者の取った行動にはやむを得ない事 …

3ヶ月経過後の相続放棄が認められた例

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(公開日:2013年5月18日)

被相続人の子が、相続開始(父の死亡)から3ヶ月が経過した後に相続放棄申述して、無事に受理された事例です。

客観的にみれば熟慮期間を経過していると判断されても仕方ない事実はあるものの、ご依頼者の取った行動にはやむを得ない事情がありました。

私としては、全体の事情を踏まえて判断すれば相続放棄申述が受理されるべきだと考え、却下される可能性も高いことをご説明したうえでご依頼いただくことになりました。

大まかな事情は次のとおりです。個人情報保護のため、判断に影響が出ない範囲で細部を変更しています。

相続人代表者指定届の送付

相続人は、依頼者とその兄です。兄は事業に失敗して多額の借金を抱えており、父はその肩代わりでほとんど全ての財産を使い果たしてしまいました。

父が亡くなったときにわずかに残っていた銀行預金も、兄がすべて引き出してしまいました。そのため、父には相続すべき財産は何も無いと考えていました。

ただし、父が住んでいた土地家屋は、祖父名義だろうとは認識していました。祖父はすでに亡くなっていたので、依頼者も相続人としての父の権利を承継していることにはなります。

しかし、兄は、父が亡くなった後もお金に苦労しているようです。そのため、祖父と父いずれの相続財産であったとしても、自分が引き継ぐものは全く無いと考え、何の手続きもしないでいたのです。

それが、父の死から10年以上も後になって、市役所の資産税課より「相続人代表者指定届」が届いたのです。

相続人代表者指定届は、亡くなった方が所有していた不動産についての、固定資産税・都市計画税の納税通知書を受領する代表者(相続人代表者)を定めるためのものです。

ご依頼者としては、読んでも意味がよく分からなかったものの、父の税金を支払わなければならないのかと不安になり、市役所の資産税課へ相談に出向きました。

担当者が不在だったものの、市役所の職員が2人で対応してくれて1時間ほど話をしました。話は分かったから必要であれば連絡をすると言われ、これで大丈夫だと安心しました。このときには、相続放棄との言葉は一切出ていません。

固定資産税の納税義務を認識

それが、市役所に出向いたときからかなりの時間が経って、ようやく担当者から電話があったのです。この時には、相続人代表者指定届が送られてきてから、3ヶ月以上が経過しています。

担当者から話を聞くと、ご依頼者には父所有建物についての固定資産税の支払い義務があり、その支払い義務から逃れるためには、相続放棄をするしかないとのことでした。ご依頼者にとって、父が不動産を所有していること、およびその固定資産税の納税義務があることを明確に認識したのはこの時です。

ただし、相続人代表者指定届を見たことにより、固定資産税の支払い義務があることを知ったとすれば、遅くともこの時が「自己のために相続の開始を知った時」であることになります。それから3ヶ月が経過しているわけですから、熟慮期間を過ぎていると判断されてもやむを得ないところです。

しかし、ご依頼者としては、市役所に相談へ行き、必要であれば連絡をくれるとの職員の発言を聞いたことで、するべきことはしたとの認識を持っていたのです。

法律や税金についての知識が乏しい一般の方にとって、市役所職員の言葉をそのまま受け入れてしまうのは仕方の無いところです。そこで、担当者から相続放棄の必要性を知らされるまでは、熟慮期間が開始していないとの判断も十分に可能だと考えたのです。

相続放棄申述の受理

相続放棄の申述をする際には、上記の事情を詳細に記した文書をあわせて提出しました。さらに下記の裁判例なども引用し、相続放棄申述を受理するよう求めました。

相続放棄の申述がされた場合、相続放棄の要件の有無につき入念な審理をすることは予定されておらず、受理がされても相続放棄が実体要件を備えていることが確定されるものではないのに対し、却下されると相続放棄が民法938条の要件を欠き、相続放棄したことを主張できなくなることにかんがみれば、家庭裁判所は、却下すべきことが明らかな場合以外は、相続放棄の申述を受理すべきである(東京高等裁判所 平成22年8月10日 家月6巻4号129頁)

結局は、申立後に郵送されてきた「照会書」を返送した後に、家庭裁判所から呼び出しがありました。そして、裁判官から直接事情を尋ねられたうえで、無事に相続放棄の申述が受理されたのです。

事実は一つであるからといって、いつでも必ず同じ結果が出るわけではありません。事実を変えることはできませんが、それをどう解釈し、いかに伝えるかにより、違う結果が出ることもあるでしょう。

相続放棄の申述はやり直しのきかない手続きです。法律専門家である弁護士、司法書士であっても、誰もが相続放棄の手続きに精通しているわけではありません。困難だと思われる相続放棄の手続きでも、当事務所にご相談ください。詳しくお話を伺ったうえで、ご依頼いただいた際には最善を尽くします。

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